2026年8月30日
NVIDIA決算の見方|四半期決算で見る指標
NVIDIAの決算発表は、AI・半導体セクターの方向性を示す重要なイベントとして、世界中の投資家が注目します。
しかし「売上高が過去最高」「EPSがコンセンサスを上回った」という見出しだけを追っていても、業績の本質はつかめません。この記事では、売上高・粗利率・ガイダンスの3点を軸に、NVIDIAの四半期決算をどう読み解くかを解説します。
この記事のポイント
- NVIDIAの決算で最初に確認すべき3つの指標は「売上高の成長率」「粗利率(75%ライン)」「翌四半期ガイダンス」
- 2026年8月26日発表のQ2 FY2027決算では、売上高962億ドル(前年同期比+106%)・粗利率75.0%・Q3ガイダンス1,080億ドルと3指標すべてが市場予想を上回った
- 輸出規制による中国向け売上ゼロ・非GAAP算出方法の変更など、数字の背景にある「注意点」を把握することが長期投資判断の土台になる
NVIDIAの決算スケジュールと財務年度の基本情報
NVIDIAの会計年度(Fiscal Year)は、暦年の1月末に終わります。
たとえば「FY2027」は2027年1月期を指し、四半期は以下の構成です。
四半期 | 対象期間 | 発表時期の目安 |
|---|---|---|
Q1 FY2027 | 2026年2〜4月 | 2026年5月 |
Q2 FY2027 | 2026年5〜7月 | 2026年8月 |
Q3 FY2027 | 2026年8〜10月 | 2026年11月 |
Q4 FY2027 | 2026年11月〜2027年1月 | 2027年2月 |
この「会計年度と暦年のズレ」は、決算情報を検索・比較する際の混乱を招きやすいため、まず頭に入れておくことが重要です。
決算資料はSEC(米国証券取引委員会)のEDGARシステムで公開されており、Form 10-Q(四半期報告書)とプレスリリース(Press Release)の2種類を合わせて読むのが基本です。
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指標①|売上高:成長率と内訳の両方を確認する
NVIDIAの決算で最初に確認すべき指標は売上高です。金額そのものより「前年同期比の成長率」と「セグメント内訳」が、業績の実態を読み解くうえで重要な情報を含んでいます。
Q2 FY2027の実績
2026年8月26日に発表されたQ2 FY2027(2026年5〜7月期、四半期末2026年7月26日)の売上高は962億2,100万ドルでした(出典:NVIDIA Q2 FY2027 Press Release、2026年8月26日時点)。
前年同期(467億4,300万ドル)比+106%、前四半期比+18%で、四半期として初めて900億ドルを超えました。市場コンセンサス(約920億7,000万ドル)も約4.5%上回っています(出典:REX Shares「NVIDIA Earnings」集計、2026年8月時点)。
セグメント内訳で「どこが稼いでいるか」を見る
NVIDIAはQ1 FY2027から事業報告の枠組みを変更し、従来の「ゲーミング・プロビジュ・自動車・OEM」等の個別セグメント開示を廃止しました(出典:SEC.gov — NVIDIA Q1 FY2027 Press Release、2026年5月20日時点)。現在は「①データセンター(ハイパースケール/ACIE)」と「②エッジコンピューティング」の2プラットフォームに再編されています。
この変更により、過去との詳細な事業別比較が困難になっている点は注意が必要です。
Q2 FY2027のデータセンター部門売上高は890億ドル(前年同期比+117%、前四半期比+18%)で、全社売上高の約92%を占めました。もう一方のプラットフォームであるエッジコンピューティングの売上高は72億ドルでした(出典:NVIDIA Q2 FY2027 Press Release、2026年8月26日時点)。
開示が2プラットフォームに集約されたため、ネットワーキングやGPU単体といった製品ごとの内訳を四半期ごとに追うことは難しくなっています。プラットフォーム単位の伸び率と、全社売上高に占める構成比の変化を見ることが、需要動向を把握する起点になります。
通期との比較で成長トレンドを把握する
FY2026(2026年1月期)通期売上高は2,159億3,800万ドル(前年度比+65%)で過去最高でした(出典:SEC.gov — NVIDIA Q4 FY2026 Press Release、2026年2月25日時点)。
四半期単位の数字は変動が大きいため、通期トレンドと照らし合わせることで、一時的な要因か構造的な成長かを判断しやすくなります。
指標②|粗利率:「75%ライン」が市場の注目指標になった理由
売上高が伸びていても、コストがそれ以上に膨らんでいれば利益は出ません。そのため、粗利率(売上総利益率)は売上高と並んで重要な指標です。
粗利率75%が「焦点」になった背景
日本経済新聞は、2026年5月のQ1 FY2027決算発表前に「価格決定力を示す75%の売上高総利益率(粗利率)を達成できるかが焦点」と報じていました(出典:日本経済新聞、2026年5月)。
NVIDIAのAI向けGPUは競合他社が容易に代替できない製品であり、高い粗利率はその「価格決定力」の証拠として市場が注目しています。
Q2 FY2027の実績
Q2 FY2027のGAAP粗利率とNon-GAAP粗利率は、いずれも75.0%でした(出典:NVIDIA Q2 FY2027 Press Release、2026年8月26日時点)。
前年同期のGAAP粗利率は72.4%であり、1年間で2.6ポイント改善しています。注目されてきた75%ラインをGAAPベースでも回復した形です。
FY2026通期での粗利率低下と背景
一方、FY2026通期のGAAP粗利率は71.1%と、前年度(75.0%)から3.9ポイント低下しました(出典:SEC.gov — NVIDIA Q4 FY2026 Press Release、2026年2月25日時点)。
これは米国の輸出規制に伴うH20チップ在庫評価損(約45億ドル)が主因とされています。このように、粗利率の変動には「製品構成の変化」と「規制による特殊要因」の両面があるため、単純な前期比較だけでは読み誤るリスクがあります。
GAAPとNon-GAAPの違いに注意
NVIDIAはFY2027 Q1から、非GAAP財務指標の算出方法を変更しました(出典:SEC.gov — NVIDIA Q4 FY2026 Press Release、2026年2月25日時点)。従来は除外していた株式報酬費用(Stock-Based Compensation)を非GAAPにも含めることとしたため、過去期間との単純比較が困難になっています。
決算情報を追う際は、GAAP・Non-GAAPのどちらの数字を見ているかを常に確認することが重要です。
指標③|ガイダンス:翌四半期の予想が株価反応を左右する
NVIDIAの決算で「実績と市場予想との比較」と同じくらい重要なのが、翌四半期のガイダンス(業績見通し)です。
過去の実績がどれほど良くても、ガイダンスが市場の期待を下回れば株価は下落することがあります。逆に、実績が市場予想をわずかに下回っても、強いガイダンスが示されれば株価が上昇するケースもあります。
Q3 FY2027ガイダンスの内容
NVIDIAはQ3 FY2027(2026年8〜10月期)の売上高ガイダンスを1,080億ドル±2%と提示しました(出典:NVIDIA Q2 FY2027 Press Release、2026年8月26日時点)。
これは市場コンセンサス(約1,038億ドル)を約4%上回る水準です(出典:REX Shares「NVIDIA Earnings」集計、2026年8月時点)。粗利率についてはGAAP・Non-GAAPともに74.0%±50ベーシスポイントとの見通しが示されており、Q2実績の75.0%をやや下回る水準です(出典:NVIDIA Q2 FY2027 Press Release、2026年8月26日時点)。
さらに注目すべきは、このガイダンスにも「中国向けデータセンターコンピュート売上を織り込んでいない」と明記されている点です。中国向け売上をゼロと置いた状態でも、市場予想を上回るガイダンスを示したことになります(出典:NVIDIA Q2 FY2027 Press Release、2026年8月26日時点)。
ガイダンスを読む際の3つのチェックポイント
- コンセンサスとの乖離幅:アナリストの市場予想(コンセンサス)を何%上回っているか、または下回っているか
- 除外・前提要因の明示:中国向け売上のように、意図的に含めていない要因がないか
- 粗利率の見通し:売上高だけでなく、翌四半期の粗利率予想も同時に確認する
EPSの読み方:GAAP EPSに潜む「チップ以外の利益」
EPSは1株当たり純利益を示す指標で、株式の収益性を評価する際に広く使われます。
Q2 FY2027のNon-GAAP希薄化後EPSは2.22ドル(前年同期1.01ドル、+120%)で、市場コンセンサス(2.09ドル)を上回りました(出典:NVIDIA Q2 FY2027 Press Release、2026年8月26日時点。コンセンサスはREX Shares集計、2026年8月時点)。
一方、GAAP希薄化後EPSは2.46ドル(前年同期1.08ドル、+128%)でした。この差が生じる理由として重要なのが、純利益596億8,800万ドルには株式評価損益(Gains from equity securities, net)77億7,100万ドルが含まれており、この部分はチップ販売由来ではないという点です(出典:NVIDIA Q2 FY2027 Press Release、2026年8月26日時点)。
GAAP EPSがNon-GAAP EPSを大きく上回る場合、その差分が「本業以外の要因」によるものかどうかを確認することが、業績の実態を正確に把握するうえで不可欠です。
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株主還元情報:自社株買いと配当の変化も確認する
NVIDIAの決算では、業績数字と並んで株主還元の動向も重要な情報です。
Q2 FY2027において、NVIDIAは自社株買いと配当を合わせて約260億ドルの株主還元を実施しました(出典:NVIDIA Q2 FY2027 Press Release、2026年8月26日時点)。
四半期末時点で自社株買いの残枠は990億ドルあり、四半期配当は1株0.25ドル(基準日2026年9月10日、支払日2026年10月1日)と発表されています。
自社株買いは流通株式数を減らすため、1株当たり利益(EPS)の押し上げ要因になります。配当の大幅増額は、経営陣がキャッシュフローの見通しに自信を示すシグナルとして市場が解釈することがあります。ただし、こうした情報も投資判断の一材料であり、将来の株価動向を保証するものではありません。
決算で見落とされやすいリスク要因
好業績の数字だけを追っていると、見落としやすい懸念点があります。
輸出規制リスク
Q3 FY2027のガイダンスにも中国向けデータセンターコンピュート売上は織り込まれておらず、米中輸出規制はNVIDIAの業績に対する継続的な変数です(出典:NVIDIA Q2 FY2027 Press Release、2026年8月26日時点)。
株価反応と業績のギャップ
日本経済新聞は、2026年5月のQ1 FY2027決算について「好業績にもかかわらず時間外取引での株価反応は薄かった」と報じています(出典:日本経済新聞、2026年5月20日)。また、3四半期連続で決算翌日に株価が下落していたという情報も同紙は伝えています。
これは「業績の良さがすでに株価に織り込まれていた(ポジティブな材料の出尽くし)」という市場心理を反映している可能性があります。決算の数字が良くても、株価が必ずしも上昇するわけではない点は理解しておく必要があります。
セグメント変更による比較困難
Q1 FY2027からの事業報告枠組みの変更により、ゲーミングや自動車など従来の個別セグメント別の詳細データが開示されなくなりました。過去との比較分析を行う際は、この変更点を踏まえた解釈が必要です。
3指標まとめ:決算チェックリスト
以下に、NVIDIAの四半期決算を読む際に確認すべき3指標を整理します。
指標 | 何を確認するか | Q2 FY2027の実績 |
|---|---|---|
売上高 | 前年同期比成長率・セグメント内訳 | 962億ドル、前年同期比+106%(データセンターが約92%) |
粗利率 | 75%ラインとの比較・GAAP/Non-GAAP区別 | GAAP 75.0%・Non-GAAP 75.0% |
ガイダンス | コンセンサスとの乖離・除外要因の明示 | 1,080億ドル±2%(コンセンサス約1,038億ドルを約4%上回る) |
この3点を軸に決算資料を読むことで、見出しの数字だけでは見えない業績の実態と市場の期待値とのギャップを把握しやすくなります。
まとめ
NVIDIAの四半期決算を読む際は、「売上高の成長率」「粗利率(75%ライン)」「翌四半期ガイダンスとコンセンサスの乖離」という3つの指標を軸にすると、業績の本質が見えてきます。
2026年8月26日発表のQ2 FY2027決算は、3指標すべてで市場予想を上回る内容でしたが、ガイダンスに中国向け売上を織り込んでいないこと、Q3の粗利率見通しが74.0%と75%ラインを下回ること、非GAAP算出方法の変更など、数字の背景にある文脈を理解することが重要です。決算情報は投資判断の材料の一つであり、最終的な判断はご自身でお行いください。
よくある質問
Q. NVIDIAの決算はどこで確認できますか?
A. 米国SECのEDGARシステム(sec.gov)でForm 10-QおよびForm 10-Kが無料で公開されています。NVIDIAのInvestor Relations(investor.nvidia.com)でも決算プレスリリースや決算説明会の資料が確認できます。
Q. GAAPとNon-GAAPはどちらを見ればよいですか?
A. 両方を確認することが基本です。GAAPは会計基準に従った数字で、株式報酬費用や評価損益が含まれます。Non-GAAPはそれらを除いた「本業の収益力」に近い数字として企業が提示しますが、算出方法は企業ごとに異なります。NVIDIAはFY2027 Q1から非GAAPの算出方法を変更しているため、過去比較の際は注意が必要です。
Q. ガイダンスとコンセンサスの違いは何ですか?
A. ガイダンスは企業自身が発表する翌期や通年の業績見通しです。コンセンサスはアナリスト複数名の予想の平均値(市場の期待値)です。株価は「事前のコンセンサスに対して、発表されたガイダンスや実績がどうだったか」で大きく動きます。ガイダンスがコンセンサスを上回れば「ポジティブサプライズ」、下回れば「ネガティブサプライズ」として市場が反応することがあります。
Q. NVIDIAの会計年度はいつ終わりますか?
A. NVIDIAの会計年度は1月末に終わります。例えば「FY2027」は2027年1月期(2026年2月〜2027年1月)を指し、Q1は2〜4月、Q2は5〜7月です。暦年(西暦)より会計年度の表記が1年先となるため、決算情報を検索する際は年度を確認することをお勧めします。
Q. 粗利率が75%を下回ると何が問題なのですか?
A. 粗利率はNVIDIAの価格決定力と製品競争力を示す指標として市場が注目しています。75%を下回ると、コスト上昇や製品ミックスの変化、競争激化などが起きている可能性があるとして、投資家やアナリストが警戒するケースがあります。ただし、一時的な特殊要因(輸出規制による在庫評価損など)が原因の場合もあるため、背景の確認が重要です。
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