2025年1月7日
米・ロサンゼルス山火事 被害範囲拡大続く

米・ロサンゼルス山火事 被害範囲拡大続く
2025年1月7日に発生したロサンゼルスでの山火事は、ロサンゼルス史上最悪の自然災害と言われ、強風により被害範囲が急速に拡大していきました。3日経った現在も火災はおさまらず、出火原因も不明と報道されています。
今回の火災による死者は少なくとも5名にのぼり、焼失した建築物や車両などは数万棟規模に及ぶとされます。
本記事は、米国株を取り扱うWoodstock経済部がロサンゼルスの山火事の現在の状況についてわかりやすく解説します。
- ロサンゼルス山火事 強風により被害拡大
- X JAPANのYoshikiも避難 高級住宅地など各地で火災
- トランプ次期大統領 州知事を「無能」と批判
- 被害額は1350億ドル以上となる見込み
- 保険金も莫大な額になる見込み
- 電力会社エジソン・インターナショナル株価は急落
- 10日現在、いまだ鎮火の見通しは立たず
ロサンゼルス山火事 強風により被害拡大
サンタアナ風と呼ばれる独特の強風と長期的な乾燥気候の影響により、火事は拡大。ロサンゼルスの高級住宅地「パシフィック・パリセーズ」からパサデナ北部のアルタデナ、さらにハリウッド・ヒルズやサンフェルナンド・バレーまで次々と火の手が広がり、一時的に18万人もの住民が避難を命じられるという事態に陥りました。
さらに、多数の消火栓が一斉に使用された結果、水圧が低下し、消火栓から水が出ないという事態が発生。ロサンゼルス市水道電力局(LADWP)によれば、これまでに経験したことのない規模の消火用水の需要が一度に生じ、水供給システムが追いつかなかったと報告されています。カレン・バス市長は、「約20%の消火栓が水を供給できない状態になった」と説明しています。
加えて、風速70マイル(約112キロ)を超える強風により消防用航空機も離陸できず、地上からの消火活動が制限されている事態となり、火災の拡大と鎮火の遅れに繋がっています。
X JAPANのYoshikiも避難 高級住宅地など各地で火災
最も深刻な被害を出しているのは、太平洋に面した高級住宅街パシフィック・パリセーズを飲み込んだパリセーズ火災です。
ロサンゼルス史上最悪とも言われるほど多くの建物が焼失し、映画やドラマの撮影地として知られるパリセーズ・チャーター高校や、俳優ビリー・クリスタル夫妻が45年間住んでいた自宅までもが全焼したことが明らかになっています。
ロサンゼルス(LA)在住であるX JAPANのYOSHIKIさんも9日、自身も避難していることをXで報告しました。彼の投稿からも、火災の被害がいかに甚大であるかが伺えます。
X JAPAN YOSHIKI 氏のXへの投稿 / 本人Xより引用
地価の高い物件が集中する地域であるがゆえに、一棟あたりの被害額が膨大になると予測されており、経済的ダメージも非常に大きいとみられています。
パサデナ北部のアルタデナ地区に広がったイートン火災もまた、4,000棟以上の住宅や商業施設、車両を巻き込み、緊急避難が相次ぎました。
高齢者施設では数多くの入居者を車椅子や医療用ベッドごと避難させなければならないなど、きわめて混乱を極める光景が報じられ、地域住民だけでなく消防隊員やボランティアへの負荷が一気に高まっています。
ほかにも、ハリウッド・ヒルズではサンセット火災と呼ばれる火災が観光客の多いハリウッド・ボウル付近にまで迫ったほか、サンフェルナンド・バレーのシルマー地域やウェストヒルズでも新たな火災が発生し、ロサンゼルス市全体が未曽有の危機に直面しています。
トランプ次期大統領 州知事を「無能」と批判
ロサンゼルス周辺の火災被害が拡大するなか、トランプ次期大統領は、カリフォルニア州の森林管理や水資源保護策を批判する発言を続けています。
トランプ氏はSNS上で、カリフォルニア州知事であるニューサム氏を「無能」呼ばわりし、魚類保護と消火栓の水不足問題を強引に結びつけるなどの言動を展開しています。
しかし、専門家によれば、今回の市街地における水不足問題は多数の消火栓が一斉に使用されたことが原因であり、州の環境保護政策との直接的な関係は薄いとみられています。
ニューサム州知事はCNNの取材で、「人々が命を落とし、家や学校など人生の基盤を失っている最中に、このような政治化をするべきではない」と冷静に反論しました。
一方、現職のバイデン大統領は、非常事態宣言を出して連邦資金による支援を行う方針を早々に表明し、危険物の除去費用や仮設シェルターの設置、それに伴う初動要員の給与などを含む支出を180日間、連邦政府が全額負担する姿勢を示しました。
バイデン大統領は現地視察時に「気候変動は現実の問題であり、政治的対立や神の仕業に矮小化している余裕はない」と述べ、被災地支援に全力を注ぐ考えを強調しています。
被害額は1350億ドル以上となる見込み
今回の火災による経済的な損失額や保険金も膨大なものになると推定されています。
民間気象会社アキュウェザーは、9日に火災の被害額を少なくとも520億ドルから570億ドルと推計。その後情報修正し、被害額が1350億~1500億ドルに及ぶと推定した。さらに状況が悪化すればまた上振れする可能性があるとしています。
不動産価値の高いパシフィック・パリセーズなどで、平均して数百万ドルの住宅が多数焼失している点が最大の要因とされています。
保険金も莫大な額になる見込み
また、保険金支払い総額については、保険や再保険を扱うアナリストは「少なくとも60億ドル〜130億ドル、あるいはそれ以上」という意見が相次いでいます。
エバーコアISIやBMOキャピタルマーケッツ、オートノマスなどの調査機関によれば、ハワイ・マウイ島の山火事(2023年)では30~40億ドルの保険金支払いが発生しました。今回の火災では、1棟あたりの再建費用が格段に高いことから、被害報告数が増えるほどに雪だるま式に支払い金額が膨らむ恐れがあると見ています。
JPモルガンは、当初100億ドル規模とされていた保険金支払い見通しが、新たな火災の発生や家屋被害の増加に伴い、最終的には200億ドルにも達する可能性があると上方修正されました。
カリフォルニア州では、近年の山火事リスクの増加に伴い、多くの民間保険会社が火災保険の引き受けを縮小しています。その結果、通常の保険に加入できない住宅所有者が増加し、州が運営する「カリフォルニアFAIRプラン」への加入者が増えています。
FAIRプランは、高リスク地域の住宅所有者に基本的な火災保険を提供する制度で、州政府が管理・運営しています。言ってしまえば最後の砦です。しかし、FAIRプランの保険料は一般的に高く、補償範囲も限定的であるため、加入者にとって経済的な負担となります。
FAIRプランのエクスポージャー(引き受けている保険契約の総額)は増加傾向にあり、2024年9月時点で4,580億ドルに達し、前年同期比で61.3%の増加を示しています。このような状況下で、無保険や補償が不十分な住宅が増える可能性があり、被災後の復旧資金の調達に困難をきたす住民が増えることが懸念されています。
電力会社エジソン・インターナショナル株価は急落
このような状況下で、被災地に電力を供給する大手ユーティリティ企業に注目が集まっています。報道によれば、南カリフォルニア・エジソン(Southern California Edison)の親会社であるエジソン・インターナショナルの株価が、1月8日(水)に大幅下落し、一時的に13%以上値を下げる場面がありました。
エジソンインターナショナル(EIX)の5日間の株価(2025年1月10日20:02分現在)/Woodstock
米国内では、2019年にPG&E(パシフィック・ガス・アンド・エレクトリック・カンパニー)が山火事の賠償負担を理由に破産申請を行った前例があるだけに、投資家はユーティリティ企業が将来的に背負うかもしれない負債リスクを警戒しているようです。
ただし、今回の火災については、現時点で南カリフォルニア・エジソンの設備が出火原因と確定しているわけではありません。株価下落は、純粋に投資家が「万が一、設備に起因していた場合」の法的・財務的リスクを織り込み始めた動きと考えられています。
近年のカリフォルニア州では、2019年以降に実施された法改正(AB 1054)によって、電力企業が火災の原因となった際の賠償責任が一定程度軽減される仕組みが整備されたものの、投資家の心理を大きく揺るがしているようです。
バンク・オブ・アメリカやジェフェリーズなどの証券アナリストは、既存の法制があるため、PG&Eの破産時のような最悪のケースには至らないとの見解を示していますが、現時点で火災の収束や設備被害の全容が不透明である以上、リスクを完全に排除することは難しいとの見方が強まっています。
また、PG&E自体の株価も、8日の取引で3.7%下落したほか、サンディエゴ地域をカバーするセンプラ・エナジー(Sempra)も1.7%下げるなど、カリフォルニア州のユーティリティ関連銘柄全体が逆風を受けた形です。センプラ傘下のSDG&Eは火災リスクを回避するために一部地域で事前に送電停止措置をとっており、約9,000世帯が停電状態になったと報告されています。
センプラの5日間の株価 (2025年1月10日20:02分現在) / Woodstock
10日現在、いまだ鎮火の見通しは立たず
ロサンゼルスの山火事は未だ完全には鎮火されておらず、新たな出火や再燃のリスクを抱えたた状況が続いています。
消防当局は、天候が一時的に落ち着いている間にできる限りの消火活動と防火帯の確保を進めていますが、今後再びサンタアナ風が強まるとの予報もあり、収束の時期は依然として見通せません。
さらに、1月下旬以降の寒波がテキサス州など他地域で大きな被害をもたらす可能性があることを指摘する声もあり、2025年第一四半期の保険・再保険市場は例年以上に不安定化する可能性が高いとみられています。
被害が1秒でも早く収まることを願ってやみません。
参考:
- 日経新聞, https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN101OK0Q5A110C2000000/
- AP, https://apnews.com/article/trump-newsom-wildfire-los-angeles-california-hydrants-water-3d20474ceb25f163adff4456a54efbf2
- AP, https://apnews.com/article/california-fires-things-to-know-winds-f93d41dc901e352b63e86ab67ef7790e
- AP, https://apnews.com/article/wildfire-southern-california-santa-ana-winds-b565a3bd043d6444820f1571b2307bf1
- ロイター, https://jp.reuters.com/markets/commodities/4GWIAFPDI5J23EAXGUM5R7JKPA-2025-01-10/
- ARTEMS, https://www.artemis.bm/news/la-wildfires-analysts-put-insured-losses-in-6bn-13bn-range-economic-loss-said-52bn/
- X JAPAN Yoshiki氏 Xのポストより, https://x.com/YoshikiOfficial/status/1877295795709370403